販売員だって恋します
「僕もですよ。素晴らしい料理人ですから。でも、父はそういう人です」
頑ななところまで、由佳にそっくりだ。

ふっ、と大藤は笑ってしまった。
「大藤さん？」

「由佳さんはね、私の大切な人なんです。彼女が今、『くすだ』のために危機にある、としても、そうして、ここにいますか？」

「どういうことですか？」
大藤は、今の『くすだ』の現状を語った。



「そんなことが……」
「失礼ですが、絋さんはお戻りになるつもりはおありなんですか？」
それには迷うことなく、絋は首を横に振った。

「いいえ。けれど由佳ちゃんは僕には大事な妹なんだ。大藤さん、僕に何かできることはありますか？」
大藤は少し考える。

「ご協力いただけるのなら、あるいは……。けど絋さん、私のことは何とも思わないんですか？」
突然現れた由佳の知人を名乗るだけの、他人だ。

「由佳ちゃんが選んだ相手ですから」
そう言って、絋はにこっと笑う。
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