販売員だって恋します
呆然とした様子の奏に、成田が一生懸命言っている。
その瞬間、奏の目から涙がポロポロっと零れたのだ。

「え?!ごめん!ホントごめん!」

気付いたら、だーっという感じで、涙が溢れている。
急に泣き出した奏を見て、クールそうな成田がとても焦っているのが微笑ましい。

「何焦ってるんですか!」
「泣くほど嫌とは思わなくて……」
奏は翔馬の胸元をぎゅっと掴んで揺っていた。

け……喧嘩!?ど、どうしよう?!
止めた方がいいんだろうか、と由佳も笹塚夫妻も、あわあわし始めた時である。

「違います!もう!翔馬さんが選んだんでしょ?気に入らない訳ないじゃないですか!」
その場に、奏の澄んだ声が響いた。

「びっくりしたんです。何で、末森マネージャーとか由佳ちゃんまでいるんですかぁ……」

「ほら、いつか奏のお父さんに順番が違うと言われて。今回、うちの親は入籍が先でも構わないと言ったけど、あれはどうしても奏にお嫁さんに来て欲しかったからみたいで」

そう言って、成田は奏の涙を拭いてあげている。
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