販売員だって恋します
本気になられても困る。
そんなことを言うくせに、食事に誘ったり、まあそれはほとんど仕事だけど、こんな風に面白い、なんて笑ったりして、
こっちが……困る。

「マナーがきちんとしていて、素直でしかもハッキリしていて可愛らしい。それでいて、面白くて……目を離せない。」

「褒めても、何も出ませんよ。」
ありがとうございますとも言えず、つい口から出てしまったのは、そんな可愛くない言葉だった。

「そうかな?」
大藤のその声に、色香が混ざったような気がして、由佳は顔が赤くなるのを感じた。

「由佳の中で、俺はどう思われているんだろう?」
大藤は落ち着いた雰囲気で、そんなことを言う。

悪い人、で、本気にはならない人。
普段は丁寧過ぎるくらい丁寧な言葉遣いなのに、時折名前で呼んだり、急に普通に喋ったりして由佳を戸惑わせる。

それが色っぽく見えたりして、困る人……。
けれどこんな、告白めいたことは言えない。

食事を終えて、外に出ると大藤がタクシーに向かって、手を挙げていた。
「まだ、大丈夫でしょう?」
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