憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
「ふふっ。2人ともいい事あったね?」
翌朝、朝食の席でユーリ様に楽しげに言われて、私は顔が熱くなるのを感じる。
「ふふ、アルマもジェイドも分かりやすくて可愛いなぁ」
どうやら既に、ジェイドに会っているらしい。ジェイドも目に見えて分かるほどの変化があったらしいのが、また照れ臭い。
「ごめんね、こんなことにならなければ、もっとグイグイ行けたのにねぇ?」
「?」
唐突に申し訳無さそうに謝られて、その理由に心当たりがない私は、きょとんとして首を傾ける。
そんな私を見たユーリ様は、困ったように少し眉を下げて
「ふふっ、ジェイドに謝るべきかな、まずは」
そう意味あり気に笑った。


「お腹が少し出て来ましたね?」
食後、徐にお腹を撫でているユーリ様を見て言えば、ユーリ様はそうだね、と言ってお腹を突き出して見せる。
彼女はまだワンピースのナイトガウンの姿で、布地を身体に這わすように押さえつければ、彼女の胸下からお腹のふっくらとした膨らみが随分と分かるようになった。
「そうなんだよ、動いてるのも分かりやすくなってきたし、なんだかようやく実感が湧いてきたよ」
優しくお腹を撫でて、嬉しそうに微笑む彼女は、とても神々しくて尊く目に映る。
「とにかく、休養に入る前にジェイドのアルザバルドの件が片付いて良かったよ」
お腹を撫でながら、心底安心したようにユーリ様が呟くので、私も同意する。
お腹から視線を外したユーリ様は、一口ハーブティーを口にすると、こちらに視線を向ける。
その表情は先ほどの穏やかなものではなく、少し心苦しそうで。無意識に私も背筋に力を入れる。
「でも…またこういう話は出てもおかしくない。あいつを国に留めとくためにも、ジェイドも結婚を考えてもらわないといけないかもしれない。あいつは独身でいいって言っているけど、この風向きではそうもいかないだろう。今すぐじゃないけど、アルマにも覚悟しておいて欲しい」
ユーリ様の言っていることは、たしかに私もこの件で思った事だった。
いくらジェイドにその気がなくても、やはり第3王子である彼の立場は何かと利用価値があるわけで…まだどんな思惑に彼の運命が左右されるのか分からない。
「そうですね。私も、正直それは考えました。」
ジェイドの妻と、彼を共有する事になる事ももちろんとても抵抗はある。恐らく、妻の立場となる女性だっていい気はしないだろう。しかし…ジェイドがいなくなる事に比べたら…そんな自分本位な考えが湧いてしまうのだ。
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