終わらない夢 II
特に何も思いつかないままお昼になった。
「……はぁ」
「ついたため息は拾えよ」
「そりゃそうだけどさ」
「何が気になってんだ?」
お見通しらしい。
「うーん…話せば長くなるかな」
「ふーん?…あれ、この鈴こんな綺麗だったか?」
「鈴?」
使い道もよく知らない、でも手放せない鈴。そういえば筆箱につけてたっけ。
綺麗って…
「誰か映ってる、誰だこのイケメン?」
「ん…?」
「俺の顔だった、ははは」
「なにそれ」
たぶん、笑わせてくれようとした。この前のこともあるし、昨日も帰り際に『返事はゆっくりでいい、待ってるから』と言ってくれた。
ああ、本当に好きでいてくれてるんだと思った。
「なあ、優奈」
「ん?」
「…夢の世界って、犯罪とか無いよな」
「は?」
「その、えっと。ごめん、本当ごめん」
話が掴めないんですけど。
「な、なにが?」
「俺…あの、優奈と…」
「…は?」
「ゆ、夢で、えっと……ごめん」
「なに?どういうこと?」
そんな顔真っ赤にしながらごめんだけ言われてもなあ…。
「や、やっぱ忘れてくれ、うん」
「うん…?」
「朝からこんなでさ、はは…おかしいな」
ちょっと何言ってるか分からないんだけど。何のつもりなんだろう?


放課後、その会話を聞いていたらしい名波ちゃんがそのことを掘り下げてきた。
「なんの話してたの?」
「なんか…ごめんってひたすら言われた」
「優奈ちゃん…何したの…?」
「いや、本当に分かんない」
「…ふたりの所だけ異様な空気流れてたよ」
「え?」
「ピンクピンクした……そんな感じの」
そんなに異質だったかな。いや、今思えば異質だったと思う。急に『ごめん』って言われ続けることなんて無いし。
「まあ、上手くいってそうだね」
「なにが?」
「…私、応援してるからさ」
いつもとは違う笑顔だった。
「え…?」
「『いのち短し恋せよ乙女!』ってね!」
「こんどはなんのドラマ?」
「私の好きな凛ちゃんが主演のラブコメドラマ❤︎」
相変わらずの勢いだった。さっきの雰囲気はどこへ行ったのやら。
「あれ?それ、門堂行きのバスだよ?」
「うん。ちょっと用があって」
「お願いごとでもするの?」
「そういうんじゃないけど…難しい話」
たぶん、夢の世界に囚われた友達を助けます、なんて。そんな話、誰も信じないと思うし。
「ユメ?」
「な、なんでもない」
「ふうん…?」
「またねっ!」
「ばいばーい」


なんか、今日は変な一日になった。
過去の友達のことを調べようとした途端にこうなってしまう。この先大丈夫かな。

不安だなあ。
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