涙の涸れる日
煌亮の父

幸せを願う

 父親に話があるから、時間がある時に帰って来るように言われた。

 何の話だろう? 

 紗耶とバーで会った翌日気持ちを伝えて、ご家族にも僕の想いを話してから一週間。

 久しぶりに実家に帰った。

「母さん。ただいま」

「煌亮。お父さんなら書斎に居るわよ」

「うん。分かった。行ってくるよ」

 ドアをノックして
「父さん。煌亮だけど」

「あぁ、入れ」

「話って、何?」

「まぁ座れ」
父はソファーに座った。
向かい合って座ると

「煌亮、すまなかったな」

「えっ? 何が?」

「大学受験の時、美大を諦めさせた事だ」

「そんな事。どうして今頃?」

「この前、兄さんたちが三人で揃ってここに来たんだ」

「えっ? 三人で?」

「あいつらに言われたよ。煌亮を自由にさせてやって欲しいと……」

「…………」

「貴継(たかつぐ)も賢匠(けんしょう)も規智(のりとも)も、この仕事が好きで遣り甲斐も感じて頑張ってくれている。だが、煌亮には他に進みたい道があると言われたよ」

「それは……」

「会社は三人で必ず守ってみせるから、煌亮が新しい世界に挑戦するのを認めてやってくれとな」

「兄さんたちがそんな事を……」


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