涙の涸れる日
 煌亮は、あれからきちんと両親と兄に挨拶をして帰って行った。

 きょう、初めて煌亮の気持ちを聞いて……。

 家に来て、いきなりプロポーズされるなんて……。

 着替えて来るって自分の部屋に来たけれど……。
 着替えもしないで鏡の前にただ座っている。



 煌亮は真面目で誠実な人だと思う。

 嫌いだったら八年も友達として付き合ってこない。


 向日葵畑、キレイだったな。

 そうだ。花言葉……。
 スマホで花言葉、向日葵を調べる。


 向日葵の花言葉は……。

『あなただけを見つめる』
『あなたを幸せにします』
『愛慕』
『情熱』

 ずっと私を連れて行きたいと思っていた所だと煌亮は言っていた……。

 知らなかった……。
 そんなに想ってくれていたなんて……。

「紗耶。大丈夫か?」
お兄ちゃん……。

「あ、うん」

「入るぞ」

「うん」

「何だ。まだ着替えてないのか?」

「あ、うん……」

「俺は煌亮君なら信頼出来る。紗耶を幸せにしてくれる男だと思うよ」

「うん」

「紗耶。あんなに想ってくれる煌亮君を幸せにしてあげられるのは紗耶だけなんだぞ」

「私が煌亮を幸せにする?」

「そうだよ。彼の真剣な想いを叶えてあげられるのは紗耶だけだ」

「でも良いのかな? 私が幸せになっても……」

「良いに決まってるだろ? 紗耶は誰よりも幸せになるんだ。ならなきゃいけない」

「お父さんもお母さんも、お祖母ちゃんも喜んでくれるかな?」

「当たり前だろ。みんな紗耶の幸せを願ってる」

「うん。ありがとう」


< 140 / 152 >

この作品をシェア

pagetop