涙の涸れる日
 デイビーズ家の皆さんがガーデンパーティーをしましょうと言ってくださったが、丁重にお断りをした。

 イギリスの結婚パーティーは長時間に渡って飲んで歌って踊って、ほぼ一晩中繰り広げられる。

 それでは二人の時間が無くなってしまう……。




 家の中は、アンティークな家具がブリティッシュな雰囲気を醸し出して、二人共とても気に入っていた。

 ただ煌亮はベッドだけは、新しいお気に入りの物を購入していた。

 紗耶と二人でこれからずっと使う物だから……。



 そのベッドで、ウェディングドレスを着た紗耶と煌亮は見つめ合う……。

 紗耶のベールを外し、真っ白なレースのドレスを脱がせていく……。

 紗耶も煌亮のタキシードを脱がせて、ネクタイを外し、シャツのボタンを一つずつ外していく……。

「紗耶、愛してる」

「煌亮、私も愛してる」

 真っ白なドレスを脱がせて露わになった紗耶の肌はドレスよりもなお白く透き通るほどの美しさだった……。

「紗耶。とても綺麗だよ」

「煌亮……ん……あっ」

「紗耶……」

 二人だけの熱い想いをお互いの体に教え合う……。

 これ以上の幸せなど、どこにもない……。

 

 真っ白なウェディングドレスとタキシードがベッドの周りに散らばって……。

 
「二人で幸せになろう」
紗耶を胸に抱いて髪を撫でながら煌亮が囁く……。

「私、幸せだよ。きっとこれからもずっと」
お互いの体温を分け合い抱きしめ合う……。

涙が零れた……。
でもこれは悲しみの涙ではない……。

「紗耶は涙も綺麗だよ」

煌亮が優しく指先で紗耶の涙を拭う……。

「悲しい涙は二度と流させない」

「煌亮、愛してる」
「紗耶、僕の方がずっと愛してるよ」

 二人の唇が重なる……。

 愛し合う二人だけの長い夜はまだ終わらない……。


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