涙の涸れる日
 二月になった。
 
 ウェディングパーティーの招待状も、宛名は紗耶の手書きで投函した。

 引っ越しは、三月末に決まった。

 新婚旅行は紗耶の行きたがっていたオランダに決めた。

 紗耶の好きなフェルメールの国を見せてあげたいと俺が強引に決めた。

「ありがとう。佑真」

「俺も行きたかったから」

「凄く嬉しい」
この笑顔の為なら何でも出来る気がしていた。 

 結婚の準備で、暫くデートらしい事も出来ずにいたから、久しぶりに出掛けようと車で少し遠出をした。

 勿論、日帰りだ。

 フェルメールではないが、美術館もあって、紗耶は喜んでくれた。

 この日は特別冷え込んで来て、寒そうにしている紗耶に、アウトレットモールで温かそうなコートをプレゼントした。

「ありがとう。大切にするね」
紗耶に良く似合う、淡い桜色のロングコートを……。

 美味しいビーフシチューを食べて、遅くならない内に紗耶を送って行った。

 三月に入り、引っ越しの為の準備も始めた。

 家具や家電も二人で気に入った物を選び、予定通り三月末には引っ越しも済ませた。

 大学に入学してから一人暮らしをしてきたマンションも退去して、紗耶より一足先に、新居になる部屋に住み始めた。

 専業主婦に憧れていた紗耶は三月末で父親の会社を退職した。


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