涙の涸れる日
 ホテルの和食の店で食事を済ませ、夜景の綺麗なバーに向かう。

 紗耶はネイビーのシフォンの膝丈ワンピースが大人っぽく良く似合っていた。

 カウンター席に座り、俺は
「ジンライムを」
と落ち着いたバーテンダーに注文する。

 紗耶は
「カクテルをお任せでお願いします」
と言った。

 目の前でシェーカーを振る姿も渋い。

 そして紗耶の目の前に綺麗なカクテルが置かれた。

「コスモポリタンです。美しい女性にお似合いですよ」

「綺麗なピンク……。ありがとうございます」
紗耶は目を輝かせて言った。一口飲んで
「美味しい」

「ありがとうございます」
渋いバーテンダーさんが答える。
「ウォッカとホワイトキュラソー、クランベリージュース、ライムジュースで作るカクテルです」

「クランベリーの赤なんですね」

「はい」
優しく微笑んでくれるバーテンダー。

「紗耶。ウォッカベースだから飲み過ぎは駄目だよ」

「大丈夫よ。私、結構お酒強いのよ」

 俺が居るから良いけど、一人でそんなの飲み過ぎないでくれよ。なんて考えてると……。

「おかわりください」

「紗耶」

「本当に美味しいの。二杯で終わりにするから……」
紗耶の上目遣い。この目に弱いんだよな……。

「分かったよ」

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