涙の涸れる日
　酔っていたとはいえ大変な事をしてしまった。後悔しかない。我ながら最低だと思う。

　あれから商品が足りないと仕事用の携帯に由布子から連絡が入ったが、俺は新しいファッションビルに入る店舗の仕事が忙しく、後輩の榎本に担当を代わってもらってデパートに行かずに済んでいた。

　仕事納めも済んで年末年始の休暇に入った。

　紗耶と二人で、お互いの実家に顔を出し新年の挨拶をし、近くの温泉宿の予約も取っていたので一緒に出掛けた。

　疲れた体を休めながら紗耶とのゆったりした時間を過ごす。

　結婚して一年半程になるが紗耶の初々しさは変わらなくて愛しさは増すばかり。
　こんな俺が、紗耶と結婚出来た事は奇跡だと思っている。
　大切にしなくてはいけない。絶対に悲しませてはいけない。泣かせるような事はしないと改めて誓った。

　由布子との情事は忘れよう。なかった事にしようと自分に言い聞かせた。
　関わらなければなかった事に出来ると、この時の俺は安易に考えていた。

　

< 77 / 152 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop