涙の涸れる日
佑真の仕事

新たな仕事

 仕事は順調だった。

 一月末にはファッションビルも完成しオープンした。売上は想像以上で、やり遂げたという達成感に感動すらしていた。

 三月に入った頃、佐田営業部長から社長室に行くようにと言われた。
 何だろう? 
 営業部の一社員でしかない俺に社長直々に話があるとは思えなかった。

 俺の職場の営業部とはフロアも違う。
 こんな重役専用のフロアなど普段は足を踏み入れる事すらない。

 社長秘書に呼ばれた事を話すと直ぐに社長室に通された。

 そこには先日のファッションビルの周防社長と談笑する姿が。

「高梨君、待っていたよ」
我社の日下部社長は満面の笑顔で言った。
「まあ。座りたまえ」
社長室のソファーに座るよう促される。

「はい。失礼します」
下座に座ったが居心地の悪い事この上ない。

 するとファッションビルの周防社長に
「素晴らしい仕事をしてくれてありがとう」
と言われた。

「いえ。とんでもないです」

「ここに来てもらったのは、周防社長から次の仕事を是非君に頼みたいと依頼があったからだ」

「次の仕事ですか?」

 周防社長は京都の出身で、京都に新たにファッションビルを建設中だと言う。
 そのワンフロアに我社の新旧の商品を並べ、若い女性から年配の女性まで集客出来る店舗にしたいと言う。
 
 観光地でもあり、新たな観光スポットにと考えていると周防社長は語った。

「是非、君に担当してもらいたい」
と周防社長は言った。

「私にですか?」

「そうだ。高梨君、君にだ」


 
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