涙の涸れる日
 そしてその翌日……。

 郵便受けに弁護士事務所からの封書が届いた。

 呼出状。紗耶との離婚の事で事務所に来て欲しいと書いてあった。
 紗耶には直接会ったり連絡を入れない事。
 事務所に都合のいい日時を知らせる旨書いてある。

 遂に来た。俺はそう思った。
 不倫をしていた事実は誤魔化しようがない。

 加藤弁護士事務所に連絡を入れる。
 

 そして事務所に行く日が来た。
 警察に出頭する犯罪者の気分だ。

 
「高梨紗耶さんとの離婚について受任された加藤と申します」

「はい。お世話をお掛けします」

「田所由布子さんとの不倫は認めますか?」

「はい。認めます」

「紗耶さんは離婚を望んでおられます。何か異論はありますか?」

「いえ。紗耶が望むのであれば応じようと思います」

「そうですか。では具体的な条件を提示させて頂きます。まず紗耶さんの精神的苦痛に対する慰謝料を請求します」

「はい」

「金額は五百万円を提示しておられます。それについて承諾頂けますか?」

「はい。それ以上辛い思いをさせたと反省しております」

「そうですか。それと現在お住まいのマンションですが、紗耶さんの父親の所有する物で、賃貸契約もありません。二か月以内に退去して頂きます。」

「分かりました」

「それと今後一切紗耶さんとの接触は遠慮して頂きます。宜しいでしょうか?」

「えっ? あぁ、はい。分かりました」

「では離婚届に署名捺印をお願い致します」

 目の前に出された離婚届……。
 紗耶の署名……。
 見慣れた綺麗な紗耶の文字に泣きそうになる。
 俺のせいなのに……。

 証人の欄に紗耶の父親と何故か日下部社長の名前が……。

 何故だ?

「あのう。この証人の日下部は私の勤める会社の社長なんですが。何故?」

「紗耶さんの父親の友人だそうです」

「えっ? そうなんですか……」

「ご存知なかったんでしょうか?」

「はい……」

 不倫して離婚された事を日下部社長に知られている……。

 俺の人生、終わったかもしれない……。

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