脆姫は過去に生きる
「でも、立場を考えてちゃんとした立ち居振る舞いをしないとって御影さんにも富さんにも叱られるから」
「そうだったか。私たち二人の時だけは気を遣わずにいてほしい。それが変わらなければ咲に合わせる。あ・・・」
鉄王は私のことをそなたとか、姫と呼ぶようになった。何となく”咲”と呼ぶことに対して罪悪感を感じているらしい。もしかしたら私への遠慮なのかもしれない。
「咲と呼ぶのは、嫌ですか?」
私の言葉に鉄王は一瞬体をこわばらせた。

あまり表情を変えない鉄王。冷静な鉄王。
その鉄王の反応に不安になる。

私の不安を察したかのように鉄王は『わかった』と私を抱きしめなおした。

「咲」
「・・・はい」
どうしても私がすべてを打ち明けた日から感じてしまう違和感。
抱きしめられている体は咲さんのものだ。
今頃私の中に咲さんの感情が眠っているとしたら・・・
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