脆姫は過去に生きる
「顔色が悪い。よく眠れていないからだな。もう少し休んだほうが良い。」
「少し気分転換に湯殿へ行ってきます。」
「そうか。ゆっくりしてくるとよい。」
このまま私が寝台にいると鉄王は仕事が進まないだろうと思った私は湯殿に向かうことを鉄王に提案した。
「少し動かないと食欲もわかないからな。足元に気を付けていくんだぞ。」
「はい」
「富!」
富さんは部屋扉の前にいつも待機している。
「紅姫を湯殿に。御影とほかの者も連れて行くように。」
「かしこまりました。」
鉄王は私の背中を支えながら体を起こしてくれた。

「湯殿まで一緒に行こう。」
「大丈夫です。富さんも御影さんも一緒に」
「ダメだ」
鉄王は私を立たせると私の腰に手をまわし、もう片方の手で私の手を握り、湯殿に向かい始めた。
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