脆姫は過去に生きる
「この国の復興をしっかりと目にやきつけたいのです。国母として。そして、この子にちゃんと言えるように。」
私が自分のお腹に触れると、鉄王はふっと笑って私の手を取った。

「お腹が痛んだらすぐに戻るぞ?」
「はい」
私の言葉に鉄王は優しく、どこまでも穏やかな微笑みを向けてから歩き出した。


あの大きな災害のあと、鉄王の指揮でこの国は驚くべき速さで復興をとげている。
決壊した池は元の場所にもう一度造られ、以前よりも貯水量をあげたり、決壊しないように工夫されている。
倒壊した建物は次々に元の場所に、元よりも大きく頑丈に立て直されている。

「鉄の力ですね。ここまで復興できたのは。」
「咲菜の知識もあってこそだ。」
「いえ。もっと私が知識を持っていれば、技術を持っていればよかったのですが。」
これは私の切実な後悔でもある。
< 240 / 251 >

この作品をシェア

pagetop