脆姫は過去に生きる
「王は明日から戦場へ向かうことが決まってるんですから、大切にお体を休めないと。」
「戦場は・・・亡くなる人もいますか?」
私の言葉に富さんは目を丸くする。
「何を言っているんですか。それに私にそのような言葉を使うのは間違っています。亡くなる人?いるに決まってるじゃないですか。前の戦場では王もかなり重度のケガをおわれて」
「えっ?」
話の途中で声をあげた私に「突然そのような声をあげることははしたないです。おやめください。富の胸が止まります。」と険しい表情で言う。
「ごめんなさい」
「私に頭を下げることもなりません。秩序が崩れます。昔から紅姫はそうやって分け隔てなく誰とでも接したいと言っておられますが、そうはいかないのが世の常ですよ。」
「・・・はい・・・」
「王は前の戦場でのけがを癒すためにこの城で休まれていました。それが、王がいかなければどうにも治まらない内乱が起きて、おさめに行く事態に陥っています。移動することも今の癒えたばかりの王の体には障ります。もしかしたらそれを知っている誰かの陰謀ではないかという話も出ているほどですよ。」
私は一気に全身から血の気がひいていくことを感じた。
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