余りもの王女は獣人の国で溺愛される

 婚礼衣装の試着を終えると、私は王妃の宮にお邪魔することにした。
 サーシャに先触れを出してもらって承諾を頂いてから向かうと、ティアナ様の宮にアラル様と母も揃って待っていてくれた。

「ティアナ様、アラル様、お母様。婚礼衣装の準備、素敵な物をご用意いただきありがとうございます」

 私がお礼を言うと、母たちがにこやかに答えてくれた。

「良いのですよ。あなたは王女として、しっかり務めてくれたのですから。マテリカの国からしっかり送り出したい、母たちの気持ちですからね」

 ティアナ様の言葉にアラル様も頷き、母は私を見つめていた。

「マジェリカ。獣人の番への愛は大変深いと聞きます。遠く、なかなか会うことも叶わなくなりますが、貴方の番様がきっと大切にしてくださいます。番様を大切になさい」

 同じ国内で嫁いだのであれば、ミリアお姉さまのように会うことが出来ただろう。
 でも私が嫁ぐのは、獣人の国ギャレリア王国。
 隣の国といっても、大きな森林を挟んだ向こうの国だ。
竜人のように空を飛ばない限り、大きく迂回した街道を進まねばたどり着けない遠い国だ。
 その道のりは半月かかると言われている。
 そのため、よほど商魂たくましい商人でなければ行き来が無かったのだ。

 しかし、この大森林を開墾してマテリカまでの道を作ってくれるというのだ。
今後は少しは行き来が楽になるのではないだろうか。
 それでも、結婚したら簡単にマテリカに来ることは無いだろう。
 こうして話すのも、今日この時が最後かもしれない。
 明日にはギャレリアに旅立つので、私は母たちに向かい感謝を告げた。

「ティアナ様、アラル様、お母様。今日まで導き、育てていただいてありがとうございました。お姉さま二人に比べたら平凡で、あまりなにかを出来たとは思いません。でも、この度ギャレリアとの懸け橋になれることを嬉しく思います。どうか、お母様たちは健やかに今後もマテリカを導いてくださいませ」

 こうして王妃宮で過ごした後は、再び王女宮へと戻り持って行くものの最終確認を行う。
 そうして過ごせばあっという間に日が沈んでしまうのだった。





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