余りもの王女は獣人の国で溺愛される
 
 時間にすると二時間ほど。
 使節団が着いてから早々に国交樹立のための会議だと聞いていたが、私の部屋に事務官が来るのが予想より早い。

 もう二時間ほどは宴まで時間があると思っていたのだが、しかし私の優秀な侍女たちのおかげですでに準備が済んでいた。
 のんびりお茶をしていただけなので、事務官の呼び出しにすぐに答えることが出来たのだった。

 リエナを連れて向かうのは、王宮でも王族の家族だけのための宮。
 いつも週一食事会で使う食堂を通り過ぎて、たどり着いたのは王族専用のサロンだった。
 日当たりのよい、このサロンでは家族の食事会とは別で週に二度ほど王族の女性陣でお茶会が開かれている。
 数か月に一度は、降嫁した元第二王女のミリアお姉さまもやってきたりして楽しい時間を過ごす。
 お兄様達も仕事が忙しくなければ顔を出したりするが、男性陣より女性陣が良く使う部屋だった。

 今日はそのサロンに私以外の家族が勢ぞろいしていて、さすがに私も少し驚いてしまうがすぐに表情を改めて室内に入る。
 まずは中央上座にいる陛下とティアナ様にご挨拶する。

 「お呼びとのことで、第三王女マジェリカ御前に参じました」

 皆が勢ぞろいなので、一応家族スペースとはいえ謁見の間と変わらぬようカーテシー付きで挨拶をすれば父と正妃に兄三人とアラル様に母も皆複雑な表情をしつつも、椅子に座る様に勧められた。

 内心で首を傾げつつも、私は椅子に腰かけた。
 私が勧められたのはいつも座る兄たちの側の下座ではなく、珍しく母の隣で父に近い位置の椅子だった。

 「本日来たギャレリアの使節団は我が国との国交樹立を早々に宣言してくれた。我が国とギャレリアとの国を結ぶ街道もギャレリアの方で整備して、早いうちに双方の国民が行き来できるよう整えてくださるそうだ」

 その話に私は少し驚きが隠せない。
 国同士の付き合いがまとまるには、早すぎると思ったからだ。
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