男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 眠る彼女は、俺の問いかけに答えない。
「お前が唯一、俺を男たらしめる。そしてお前は、……唯一俺の子を産む女だ」
 応えぬ彼女の耳もとで囁いて、朱色に色づく唇に己のそれを重ねた。表層を掠めるように触れてすぐに口づけを解くが、どうにも名残惜しく再び吸い寄せられるように唇を寄せる。
 最初の口づけよりもう少し深く合わせ、その柔らかさと甘さを味わいながら、胸には仄暗い欲望とそれを上回る圧倒的な愛慕が募った。

***

 サイラス様の従者として過ごす日常は、忙しくも充実していた。
 初めはやるべきことの多さに目が回りそうだったが、十日も経てばコツを掴み、戸惑うことも減ってきた。とはいえ、従者とは本来男性の仕事だ。私の意気込みとは裏腹に、任される力仕事には些か難儀することもある。
 今も、私は手入れから戻ってきたサイラス様の愛剣をはじめとする武具の一式が入った大きな箱を抱え、必死に自室を目指していた。
 その時、背後から大股で迫ってくる足音に気づく。
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