男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 ……そうだ。これで俺は金輪際、彼女ら一家を顧みずに済む。皇帝は広い視野で公平に物事を見通すべきで、その地位にある俺が個に目をかけてよい結果を生むわけがない。苦い教訓とはなったが、結果的にはよかったのかもしれん。
 こんなふうに一応の納得に至れば、セリーヌの反応も、予想外の展開に騒めく臣下らも、もう気にはならなかった。
 大股で足を進め、今まさに扉から出ようとした瞬間――。
「これでよろしいでしょうか」
 背中越しに凛としたセリーヌの声と臣下らのどよめきを聞いた。
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