年下のかわいい後輩くんが彼氏になりました

「そろそろ時間だから、出ようか」

もう時計は5時を指していて待ち合わせのお店まで行く時間を考えると、もう出かけないと遅刻しちゃう。

「啓太は、おうちに帰るんだよね?」

「うん。今夜は家で大人しくしてるよ。優菜は楽しんできて」

「ありがとう。帰ってきたら連絡するね。じゃ、行ってきます!」

私は啓太に手を振り、啓太の家とは反対の方向へ歩き出した。

少し歩いたところで、

「優菜!待って!」

啓太が呼び止める。啓太は私の所まで走ってきて、

「最後のハグになるかもしれないから。ギュッてさせて」

そう言うと啓太は私の返事を聞かずに後ろから抱きしめてきて。

「こっち向かないで、そのままで聞いて。もし今夜、優菜の気持ちが揺れるような出来事があったとしたら、自分の気持ちに素直になって。俺は大丈夫だから。それだけ。じゃ、ね」

啓太は自分の言いたいことだけ言って私の歩く方向とは反対の方へ走って行ってしまった。

私は振り返って、啓太の走る後ろ姿を見つめることしかできなかった。

最後のハグって、なに?啓太は何を言いたかったの?


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