年下のかわいい後輩くんが彼氏になりました
今夜は私が鍋や食器を洗って。
そろそろ帰ろうかな、って啓太に言ったら、
「送ってくよ。その前に優菜に渡したいものがあってさ。これ」
そう言って私の手を取り、手のひらにのせてくれたもの。
「鍵?」
「そう。この家の合鍵」
「むっ、無理だよ。こんなの預かれないよ」
「使っても、使わなくてもいいんだ。優菜に持っていて欲しい」
「どうして?私、啓太がいない時にここへは来ないよ」
「これはさ、俺の優菜に対する気持ちでもあるんだよ。優菜を真剣に思ってるし、大切にするって言う証」
「その啓太の気持ちは嬉しいけど。なんか合鍵って重いかも。私たちまだ高校生だよ」
「そんなこと言わないで。それに、これがあれば俺の浮気現場に乗り込めるけど?」
そんな風に冗談にして返してくる啓太にイラッとした。
「ばっかじゃない!そんなことする人とはお付き合いしません!」
私は冗談で言った啓太の言葉に対して本気で怒った。
「ごめんって。でも、そんなに拒否らなくてもよくない?俺、傷ついたんですけど」
「だって、浮気するとか言うから」
「冗談だろ。ごめんって」
そう謝りながらも啓太の口元が笑ってて。
「啓太、今度は何が言いたいの?」
「いつもは優しい優菜が怒るの珍しくない?俺、優菜の怒りの沸点が分かった」
「なによ、それ。いつも私の性格分析してさ。可愛くない、啓太」
「もう冗談でも浮気とか言わないよ。優菜、ごめんね?」
「うん、もういいよ。でも、鍵は預かれないよ」
「お願い!俺の気持ちなんだって。ご利益は何もないけど、お守りだと思って持っていて欲しい」
「ご利益のないお守りかぁ。啓太の気持ち分かったよ。大切にするね。私の宝物にする。さっきは怒ってごめんなさい」
「優菜が怒っても全然怖くなかったけどね」
啓太は私に合鍵を渡した。この鍵を啓太に返す時、それは啓太とお別れする時。
私はこの鍵をずっと持っていられるように、啓太をずっと好きでいたいと願った。