愛して欲しいなんて言わない!
「ほら、新しい筆箱だ」

家に帰ってきた西九条が
綺麗にラッピングされている
箱を差し出してきた

居間で宿題を片付けていた私は
顔をあげると
鼻先に筆箱だと言われる物が
ちらついていた

「ありがとうございます」

礼を言ってから受け取ると
私はばりばりと乱雑に
包装紙をむいた

綺麗に包まれていた箱はびりびりに
なって床に落ちて行った

「気にしなくていいのに
他にも探せば、筆箱くらいならありそうだったし」

「いいんだ」

ネクタイを緩めた西九条は
優しく微笑むと
自室に入っていった

着替えてくるのだろう

普段着に着替えて夕食を作る

私はまだ残っている宿題に目を戻した
今日は夕食前に宿題が終わりそうだ

そう思うと
気合いが入った
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