愛して欲しいなんて言わない!
記憶力がないから
学校の成績も悪い

まあ、勉強しようって気もないけど

…よく、高校に行けたよね?
もしかして
父親の手によって
裏口入学でもしてたのかな?

何でもいいけどさ

「良い男だった?」

「…なわけないじゃん
良い男だったら
ここに来てないよ」

「それ言える!

理菜は理想が高いからね~
私なんて
低すぎて、すぐに結婚しちゃったよ」

優衣がカウンターでコーヒーの豆を
ひいている男を見た

優衣の旦那だ

無口で体がでかくて
初めて会ったときは
びっくりしたけど

優衣を大事にしているのが
見ていてよくわかった

体調が悪いときは
必ず送り迎えをしていたし

文化祭や卒業式にも
この男は来ていた

優衣の両親が来ないかわりに
ずっと優衣を見守ってきた男だ

「そういえば、子どもつくらないの?」

見合い話から
話しをそらしたい私が質問した

「こればっかりは
授かりものだから」

優衣は肩をすくめて
笑った

この笑顔、とても可愛いと思う

女の子らしいというか
思わず守りたくなるというか

私にはできない笑顔だ

…てか
する必要なんてないし

「コーヒーは?」

ゆっくりと準備をしている大男に
私は文句を言う

「待ってよ
うちのコーヒーはこだわりがあるんだから」

優衣が苦笑いをした
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