愛して欲しいなんて言わない!

筆箱

「小西さん、どうしたの?」

机の中を覗き込んでいた私に
小林が声をかけてきた

私は顔をあげると
私より少し身長の高い小林を見た

「筆箱が…なくなったみたいで」

机の引出しにしまっておいたはず
少し席を外している間に
なくなっていた

誰かに貸した記憶はないし
近くの机で
勝手に借りてそうなヤツもいない

どこかに落としたのだろうか

でもここにしまったはずだ

上履きと皮靴の次の被害が
筆箱というのだろうか?

次は西九条の授業だ
また物がなくなったって知られたら
迷惑をかけてしまうだろう

私は新品の上履きを見つめた
今日、玄関にメモつきで
新しい上履きが置いてあった

昨日のうちに買っておいてくれたらしいが
喧嘩をしたのもあり
渡す機会を失ったのだろう

私はまた机の中を眺める

ない物は何度見てもない

「僕のよければ、貸すよ」

「あ…いや、それは悪いから
どっかにあると思うし
もう少し探してなかったら、
次の授業で貸りるかも」

私はロッカーの中を探してみた
< 97 / 151 >

この作品をシェア

pagetop