幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 リーゼロッテから、名前まで奪おうというのか。愛称だけ残して、本名は奪うというのか。
 リーゼロッテの胸が、かっと熱くなる。これは、屈辱だ。一度目の人生でだって、こんな屈辱を受けたことはなかった。
 それだけでも許しがたいのに、父――いや、フリードベルク公爵はさらに信じられないことを口にした。

「回復魔術を使うことのできる"リーゼロッテ"とお前が近いところにいるのは好ましくない。お前は、デリモの領主として赴任するがいい。家から出して野垂れ死にでもされたら気分が悪いからな、行き先は用意してやった」

 野垂れ死にしたら気分が悪いというのも、あまりな言い草だ。
 だが、回復魔術を使うことのできる"リーゼロッテ"とはどういう意味だ。

(……まさか)

 その事実に思い至った途端、一気に血の気が引く思いがした。

「フランの名前を奪うの?」

 思わず叫んでいた。リーゼロッテから名を奪っただけじゃない。フランチェスカからも名を奪おうというのか。この男は。

「残念ながら、フランチェスカは死んだ。病気だ――」

 公爵は、フランチェスカを病死ということにし、リーゼロッテの名を彼女に与えたのだ。
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