幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 リーゼロッテが跡取りだと周囲に触れ回っていた分、公爵家の娘として恥ずかしい外れスキルしか得ることができなかったからと告げることができなかったのだろう。
 だからと言って、ひとりを家から出し、残った方の名を変え、あまつさえ死んだことにするとは何様のつもりだ。

「なんでそんなひどいことをするの!」

 体格差も忘れ、リーゼロッテは、フリードベルク公爵に飛びかかろうとした。
だが、公爵は軽く手を払っただけ。それでも、軽々とリーゼロッテ――"リーゼ"は跳ね飛ばされ、床にたたきつけられた。
 頬を打ち付け、目の前に星が散ったような感覚を覚える。それでも負けずに立ち上がり、リーゼはなおもくってかかる。

「ひどい! ひどい! どうしてそんなことができるの! フランがかわいそう!」
「お前は目障りだ。早く行け。命を奪われなかっただけありがたく思え」
「――公爵! 私は、あなたを許さない! 絶対に許さないんだから!」

 手に爪が食い込むほど強く拳を握る。リーゼのその言葉には耳を傾けることもなく、公爵は部屋を出て行った。

「……リーゼロッテ」

 父が出て行ったあと、母が部屋に入ってくる。
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