幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 双子同士の気安さか、目を合わせるだけで会話ができるのではないかと思うほど心が通じ合っている妹。
 ――幸せだ。
 家族の愛も友情も知らなかった前世とは違う。あとは、素敵なスキルを授かることさえできれば完璧だ。

「ねえ、お母様」
「なぁに?」
「リーゼ、何のスキルをもらうことができると思う?」
「そうねぇ」

 母は、顎に手を当てて思案する表情になった。

「どんなスキルだったとしても、お母様はリーゼロッテのことが大好きよ。もちろんフランチェスカのこともね」
「……うん!」

 ほら、とリーゼロッテは自分自身に言い聞かせるように心の中で繰り返す。
 今の人生は幸せ。
 だって、こんなにも両親に愛されているのだから。
 自分自身に言い聞かせるように、何度も幸せと繰り返しているあたりリーゼロッテ自身、敏感に感じ取っていたのかもしれない。
 今の幸せが、「有能なスキルを授かることができるだろう」という父の予想のもとに成り立っているものでしかないということを。
 そして、その幸せが破壊されるまでさほど長い時間はかからないということも。
< 8 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop