幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
井上という姓も佳奈という名前も、施設で与えられたもの。何度か養子縁組の話が持ち上がったものの、決まらないまま高校を卒業するまでその施設で暮らした。
高校を卒業してからは、小さな会社の事務職としてすぐに就職した。
自力で大学に進学するために貯金しようと、趣味らしい趣味も持たず、友人と遊びに行くことほとんどなかった。
若い女性らしからぬ、職場とアパートを往復するだけの日々は、唐突に終わりを迎える――仕事の帰りに交通事故に遭ったのが死因だった。
(……それと比べたら、今の生活は恵まれているもんね)
歩みにつれてドレスの裾がゆらゆらと揺れるのを、視界の隅で確認しながらリーゼロッテは歩いていく。
先を行く父に抱かれたフランチェスカが、こちらに向かって手を振っていた。母と繋いでいない方、ぬいぐるみを持った手を上げてそれに返しながらリーゼロッテは口元を緩める。
少しばかりリーゼロッテに愛情が偏ってはいるが、子煩悩な父。父の欠点をきちんと見たうえで娘達の仲がこじれないようバランスを取っている母。
高校を卒業してからは、小さな会社の事務職としてすぐに就職した。
自力で大学に進学するために貯金しようと、趣味らしい趣味も持たず、友人と遊びに行くことほとんどなかった。
若い女性らしからぬ、職場とアパートを往復するだけの日々は、唐突に終わりを迎える――仕事の帰りに交通事故に遭ったのが死因だった。
(……それと比べたら、今の生活は恵まれているもんね)
歩みにつれてドレスの裾がゆらゆらと揺れるのを、視界の隅で確認しながらリーゼロッテは歩いていく。
先を行く父に抱かれたフランチェスカが、こちらに向かって手を振っていた。母と繋いでいない方、ぬいぐるみを持った手を上げてそれに返しながらリーゼロッテは口元を緩める。
少しばかりリーゼロッテに愛情が偏ってはいるが、子煩悩な父。父の欠点をきちんと見たうえで娘達の仲がこじれないようバランスを取っている母。