幼女で領主で聖女様！？名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる！

　サージの一言で、街の中心にある宿屋に一泊することになった。国境の地であるから、行き来する人の数は比較的多いらしくデリモには五軒の宿がある。
　そのうちの三軒に分かれて宿泊することになった。リーゼはリリンダやサージと一緒の宿だ。もちろん、シドも一緒である。

「え？　この子が新しい領主様なの？　そんな話、まったく聞いてないけど」

　一階にある宿の食堂で遅い夕食にしようとしていたら、給仕に来てくれた宿の女将は、リーゼを見て目を丸くした。

（まあ、たしかに五歳の子供が領主様と言われても納得はできないでしょうよ）

　リーゼは、聞こえないふりをしてオレンジジュースを口に含む。搾りたてのオレンジジュースは、甘くて爽やかな香りがする。
　足元にうずくまったシドは、女将に頼んで譲ってもらったステーキ用の肉を生のまま齧ってご機嫌だ。当面、人前では子犬のふりを続けるらしい。

「聞いてないのか？」
「……ええ、新しい領主の館で使用人を募集するとか、そんな話も聞いてないし」

　今、領主の屋敷には管理人がいるだけだと女将は言う。もし、領主が赴任してくるならば屋敷の使用人を増やす必要があるそうだ。

「明日、町長のところに話を聞きに行くしかないだろうな」