ねぇ、あのね
4月1日。月曜日。天気は晴れ。
どこかで、感情はただのエンタメだと聞いたことがある。半分以上が道化の見せ物で、周囲の心を動かしていく。わたしは感情そのものだ。突き動かされて生きていく。行動も選択も迷ったりしない。
じゃあ、わたしはエンタメなのだろうか。多分、そうなのだろうな。半分以上が道化の見せ物。明日になったら不確かなものになる。わたしの更新速度がはやくてころころ気持ちが変わる。
まるで、ピエロだ。

小さいころから友達がいなかった。気づかないうちに振り回してしまっていたのだろう。気がついたらどんな場面もひとりぼっちだった。
自分はそれで悩んだし、一刻もはやく友達が欲しかったから、自分をどうにか客観視して、自分のダメなところを理解しようと必死だったけど、そんなのも中学生で諦めた。諦めきれない自分が鬱陶しかった。現実を持て余すようになって、内に籠るようになって、身体の外側にわたしの理想がくっついているのが、触れるとぼろぼろ剥がれていく。理想は剥がれていくたびに痛みを伴い、まだら模様のわたしは自分を見失っていく。
苦しいことが人生だと思っていた。優しい人なんてこの世にはいないと思っていた。

死のうときめてからもう5回目の春が来た。わたしは18歳になっていた。気がついたら高校生も終わりそうで、大学だとかそんな未来の話ばかりが飛び交うような教室の隅でわたしは本を読んでいる。
風に色がついて見える。うすい緑色の風が吹いている。葉緑体が風に溶け出ているみたいだ。こういうのは共感覚なのか。

青春なんて本の中だけの話だと思う。ほんとうはそんなもの存在していないはずなんだ。それなのにこのやり残した気持ちはどこから来ているんだろう。わたしは高校生をやり残したのだろうか。
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