死神は花を狂おしい程愛してる
「ボス、里津と太一が来てます」
「ん。通して」

「蒼士~」
「ん」
「説明してもらいに来たよ!」
里津と太一が、蒼士の机前にあるソファーにドカッと座った。

「簡単に言うと、愛してるから」
「は?」
「だから、誰にも見せたくない」
「マジで惚れたかよ?蒼士」
「冷酷非道な蒼士に、愛情なんてあったの?」
「俺にもわかんねぇ……」

「俺はもっとわかんない」
そこへ、洋次が口を挟む。
「洋次?」
「本気で愛したら、こんなに変わるもんなの?」
「そうだな……
ただ…何をしてても花楓のことばかり考えて、花楓にどう思われるか考えてる。
息苦しくなるんだ。
好きすぎて……
涙が溢れるんだ」
苦しそうな、蒼士の表情。

こんな表情、誰も見たことがない。

「そっか…わかった」
太一が静かに言った。
「スゲーな、蒼士にこんな顔させるなんて……花楓ちゃん」
里津も感心したように言った。
「………」
「洋次はあんま考えない方がいいよ」
里津の言葉。
「洋次は感情がないみたいなもんだからな」
太一も賛同する。

そう…洋次には人の感情がわからない。
原因はわからないが、感情が欠落しているのだ。
だから、蒼士がなぜここまで変わるのかわからないのだ。
人を愛する事も、なぜ蒼士のような人間が涙を流すのかも、先程なぜ蒼士が怒ったのかも。

「でも、大丈夫だよ。
だって花楓様を消したら、蒼士に殺されるし。
俺はまだ蒼士と一緒にいたいから」
「……キモいよ…洋次」
「だよな。いつも思うが、ほんと洋次って蒼士が大好きだよな!」
「だったら、蒼士の花楓ちゃんへの気持ちわかりそうなもんだけどな!」

愛情とは違うが、洋次は蒼士に特別な感情がある。
家族とも、親友とも違う何か………
だから、洋次は蒼士の言うことだけは何でも聞くのだ。
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