死神は花を狂おしい程愛してる
え━━━?私?

「ですから、それはできません!
蒼士様にキツく言われてますので!」
掴みかかっている女性を、必死になだめている門番。

ここで出ていくのは、きっと蒼士を怒らせるだろう。
でも、ほっておけなかった。

「あ、あの…」
「え?花楓様?ダメですよ!
屋敷にお戻り下さい!」
「え…じゃあ、この人が蒼士の?」
「こんにちは」
「花楓様!?屋敷にお戻り下さい!!お願いします!蒼士様の怒りを買ってしまいます!」
「あ…はい……」
蒼士の怒りを買うと言われれば、言うことを聞くしかない。

「ちょっと待ちなさいよ!」
「え……?」
「あんた!どうやって、蒼士に取り入ったの!?」
「取り入ってなんか…」
「ちょっ…止めて下さい!竹井様!
仮にも蒼士様の奥様ですよ?」
門番が女に言う。

「じゃないと、私が蒼士と結婚するはずだったのに…!」
「え?」
そこで、花楓がバッと振り返り竹井を見る。
「あなたは?」
「この方は、竹井 静香様。
モデルをされています。
あと花楓様、蒼士様と竹井様は何もありません。ご心配されるようなことは、何も……」
「いえ…私は心配なんて……」

そう…花楓は心配なんてしていない。
どちらかと言うと、希望のようなものを持っていた。
正直、蒼士に不信感を抱き始めている、花楓。
蒼士を愛しているのかさえ、わからなくなっていた。

「返して!蒼士を!」

そして、空も暗くなり蒼士が帰ってきた。
門の前で、門番が蒼士に報告した。
「は?静香が?」
「はい、お止めしたんですが……」
「ほんと、みんな命知らずだね。
それとも、バカばっかなの?」
静かに怒りに包まれる、蒼士と呆れる洋次。
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