誰を?何を?見ているの?
13項

☆☆過去


ママは、二週間後に目を覚ました。

パパに抱き締められて
ごめんね、と
ありがとう、を、沢山言ったらしい。

私も直ぐに駆けつけて
ママを抱き締め
「ごめんね。心配ばかりかけて。」
と、言うと
ママは、首をふりながら
私にも、沢山謝ってくれた。

ママは、日常は、
本当に、穏やかで、おっとりとしていて
お嬢様なんだけど

遥を失った時の私を
ずっと、ずっと、そばにいて
見守ってくれた····ママ·····

泣き叫び、食事も取らずに
アルコールに溺れ
不甲斐ない自分に嫌気をさし
何度も·····何度も····
遥を追い···

皆、眠ることも出来ずに
私に、代わる代わるに
付いていた、と。

その日、あまりに暴れる私に
父が鎮静剤を打ち
気を失うように目を閉じた私を
皆は、少しホッとした·····と。

それを裏切る様に
私は、意識も定かでない上に
動き太ももを刺したらしい

太い血管のある場所を
指した上、アルコールを
飲んでいるため出血が酷かったと。

それをママが見つけて
錯乱状態になった······。

私には、意識がなく
まったく覚えていない。

ひと月後に目を覚ました時に
凪に叩かれた

その時の凪は、
悲しみ一杯の顔で
涙をボロボロとこぼしていた。
「遥、はるかっは、
そんな事、望んでない。」
と、怒鳴り付けられた。

私は、泣いて、泣いて
泣きつかれて眠ったみたいで
再び目を覚ました時
枕の横に封筒が置かれていた
それを·····開けてみる·····と

それは、遥からだった。

遥の手紙とママの状態を知り
私は、少しずつだが
自分を取り戻していった。

凪や遥、とも子と違い
天才肌ではない私は、
勉強のブランクを取り戻すのは、
並大抵ではなかったが
遥との約束の為
ママの為に必死で勉強して

医師となった。


今回·····
ママが、落ち着いたのは、
更にひと月が過ぎた時だった。


私は、おじいちゃまにお願いして
風間のお義祖父様にお会いした。

今回の事をお詫びしたかったから

私の好きなお店を指定してくれた
お義祖父様。

久しぶりにお会いしたお義祖父様は
疲れていて、痩せられていた。

お義祖父様の顔を見て涙がでる。
「泣かんで良い。
彩葉ちゃんは、なんも悪くない。
わしと孫のせいじゃから。」
と、言われて
首をふりながら
「申し訳ありません。」
と、言うと
「謝らんで、良い。」
と、優しく笑ってくれた。

私は、お父さんに話した内容を
二人にも話した。

おじいちゃまは、
「まったく、お前は。」
と、言うから
「私の先走りから、
本当に、すみません。」
と、言うと
「ありがとう。哲や社員達の事を
考えてくれて。
それに、百合さんを止めてくれた
そうじゃのう?」
「いえ、黒木さんからの伝言を
聞いたのが、遅くて
ママに連絡をした時は
もう全てが終わっていて
すみません。
ママは、あの状態の時は
耳に入りません。
だけど····わかった、と。
言ってくれました。
多分、その会話も覚えてないと
思いますが·····。」
「まったく、黒木のやつ
彩葉を使うとは、考えたな。」
と、おじいちゃまは、笑っていた。

風間のお義祖父様の
個人資産は、触らないで
と、お願いした。

おじいちゃまと同じ年の方を
傷つけたくない
それに、おじいちゃまの大切な
お友達だから·····

風間グループが、失くなっただけで
十分な苦しみを味わったはず
だから·····

三人で、美味しい料理を
頂いて、お別れをした。

薫や哲さんが、どうしているのか
お互い口にすることは···なかった。
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