誰を?何を?見ているの?

☆☆大変な事③


佐久間総合病院の特別室
そっと·····開ける····と·····


「お父さん·····」
「彩葉····すまないな。
百合が、また暴走したみたいで。」
と、言うから首をふりながら
「私が行けないの。
ママは、私が心配なだけ。
だけど、お父さん大丈夫。」
「ああ。大丈夫だよ。
百合は、俺の愛するたった一人の
女だからね。」
「うん。」
「少しだけ、眠らせて上げよう。
彩葉は、大丈夫か?」

「·····うん。あのね。······

と、話をした。

薫のお兄さんを思う気持ちと
風間建設の社員や家族を
守りたい気持ちに負けて
一年で離婚を承諾するなら
と、結婚を了承させた事

離婚の理由は、私に非があるように
したら良いと思っていた事

だけど、薫との生活は
居心地が良くて
穏やかな空間で
このまま·····で···なんて
思ってしまった。
ありえないよね
薫の心の中に、誰かいるのも
わかっていたのに。

お父さんは、ママのそばの椅子から
立ち上がり、私をそっと
抱き締めてくれた。

「彩葉。
俺の可愛い、可愛い娘は、
いつも、自分より他人なんだなぁ
お父さんは、お前に幸せに
なって欲しい。
それだけなんだ。」
と、言われて
「ありがとう。お····父さ····ん····」
私は、お父さんの腕の中で
しばらく泣くと······

私は、ママの頬にキスをして
「ママ、ごめんね。」
と、言って病室を後にした。

ママの病室を出た横の壁に···

「凪····」
「心配ない。院長がいれば。」
「うん、ありがとう。」
「バカっ。」
と、私の頭をポンポンとする。

本当に、私の回りには
私を思ってくれる人ばかり·····

そんな人達に
何も、返す事が出来ていない·····
と、思っていると······

「おい、彩葉。
私は、皆に迷惑かけてる
何も、返せてない
何て、思ってんじゃないぞ」
と、でこぴんをされて
「いたっ」
「ふん。飯食いに行くぞ。」
「うん。行こう。ありがとう。」
と、言うと二人で病院を後にした。

私達は、マスターの店に
三人で揃い、食事をした。
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