誰を?何を?見ているの?

☆☆なんで?②


目を開けると
白い天井が見えると同時に·····

いたっ····い·····

「天音!」「天音!!」
と、パパとママの声
「天音ちゃん!」
と、マネージャーの声も聞こえる。

体を動かすと
ひどく痛いから
目だけ····を····そっと·····動かす····と···

心配そうな
ほっとしたような
三人の顔に·····

あっ、私····
落ちた?·····
「手?指?」
と、口から·····

「大丈夫。手をかばったから
体を打ち付けたみたい。」
と、ママに言われて

そうなんだと
手や指が、何ともなくて
ほっとする。

そこへ
先生が見えて
意識の確認や痛みの確認をされ
脳の検査に向かうことに。

パパとママ、マネージャーに
心配かけたことを謝ってから
検査へ。

検査の結果
脳には、異常なく
幸い打ち身だけだったから
一週間の入院となった。

まぁ、その間は
痛みは、酷いから
痛み止めを使用しますと
いわれた。

本当に、少し体を動かしても
泣きだす位···痛い。

今夜は、ママがついてくれるらしが
私は、ほほ眠っていた。

2、3日は、痛みと熱に苦しんだが
4日目には、熱は平熱になり
5日目には、車イスから自分で歩行出来る
ようになった。

ああっ、ピアノに触れてないな
あの時は、触れていても
集中力が続かなかったのに·····

今は、思い切り、弾きたいと
思っていた。

そのためにも
朝と夕方にリハビリを取り入れて
もらった······


あれ····は·····


中庭に····

あの····人を·····みつけた······


ベンチに座り·····
空を見上げて···いた·····


······ すると ······

今日、小児病棟で亡くなった方が····

佐久間先生、ご両親に
力なく申し訳ありませんでした。
と、言われていた····らしい····

いつも、明るくて、一生懸命な
佐久間先生····

救えない命を思い、悲しみ、
空を見上げる先生を見ると
たまらない気持ちになるのよね

と、回りで話す看護師さん達の声が
耳に入った。


大事な恋人であり、
大切な幼馴染みを失った時の
彼女は、どれ程の悲しみを
苦しみを味わったのだろうか?

他人の患者さんにさえ
あんな風になるのに·····


私が気づいてから、
かなりの時間が経過しているが
彼女は、ずっと、ベンチに
座っていた。


「あなた、医者でしょ?
風邪なんか、ひいたら
患者さんにうつすわよ。」
と、ブランケットを掛けて
あげながら
「私は、明日退院するから
それあげるわ。」
と、言ってその場を離れた。

優しい言葉なんか
掛けてあげない。

私、初めての失恋だったんだから。
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