誰を?何を?見ているの?

☆☆温かい


その頃····薫は·····

いつまで、待てば良いのだろうか

このままで、良いのだろうか

何日も、何度も、考えていた。

俺が、いなければ
彩葉は、青山君に
遠慮なく、行けるのではないか

そう····思うが·····

俺だって·····俺·····だって······

簡単な気持ちで
ここまで、きたわけではない。
割りきれる····わけが·····ない····。

だが、それは俺の気持ちで
彩葉の思いとは···違う

そう考えていると
俺の携帯がなった
兄さんからだ。
「薫、暇だろ?
うちにおいで。」
「暇じゃないよ。あ~、やはり暇か。
行くよ。食べるものある?」
「ああ。お前の分も作った。」
と、言ってくれた兄貴のマンションへと
向かう。

タクシーで、20分
飲むかも知れないから車は使わなかった。

兄貴のマンションに着くと
そこには、天音もいて
びっくりした。
「薫ちゃん、久しぶりだね。
私も今日、日本に着いたの。」
天音は、俺と彩葉の式で
ピアノを弾いてくれる事になっていた。
その練習も兼ねて早目に
日本へ帰国すると言っていた。

ピアノは、彩葉が是非と
お願いしたのだ。

天音になんと言えば····
と、思っていると
「薫ちゃん。
私、日本で仕事があるから
少しだけ日本にいるの。
それで、哲ちゃんに連絡したら
ご飯食べようって言ってくれて。
さぁ、食べよう。
あっ、私が作ったわけではないけど。」
俺の式について、何も言わない天音。

兄弟も幼馴染みも
本当に·····いいもんだなぁ····
やっぱり、温かい。

「うん。ありがとう。
    お腹、すいた。」
と、言うと
二人とも優しく笑ってくれた。

三人で、それぞれの近況を話したり
昔の話をしたり
楽しく過ごした。

兄貴から、
「泊まるか?」
と、言われて
思わず頷いた。

二人で天音を送って行き
ブラブラと歩いて帰る。
なんだか····不思議な感じだ。
二人で顔を見合わせては笑い
小さいときに戻ったみたいだ。

その日は、兄貴のマンションで
久しぶりにゆっくり眠れた。

何も解決はしてない。

だが、心が軽くなった。

哲は、客間で眠る弟・薫を
見ながら·····
ただ····ただ····幸せになって
欲しいだけなのに
と、思うが
来たときより
少し顔から強ばりが
とれたようで
それだけでも、ほっとしていた。
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