誰を?何を?見ているの?
19項

☆☆俺だって


「俺だって、俺だって·····
兄さんのそばにいたかった····
いたかったんだ!!」
と、凪に殴られ
座りこんだまま叫ぶ····青山君。

「お前·····
と、言う凪に

「兄さんが、あんた達といる姿を
ずっと見ていた。
楽しそうにしている、あんた達と
俺も一緒にいたかった。
だけど、母さんが·····」
と、下を向いて話す青山君。

「遥はね、遥は、君の事を
ずっと気にしていたよ。
でも、身体の弱い自分が
弟に、何が言える、とね。
遥は、あなたに自分の分も
幸せでいて欲しいと
思っていたんだよ。」
と、彩葉が伝えると

「兄さんは·····
兄さんは·····苦しま····な···かった····の?
一人で·····行く事に·····
悲しま·····なかったの····?」
と、青山君が言うと

「痛みも酷かったと思うし
辛く苦しかったかもしれない。
だけど、こいつ、彩葉の心配ばかり
していたよ。
そんな奴だ、遥は。」
と、遠くを見ながら話す凪に
「もう。
私の事ばかりじゃなかったでしょ。
凪の事も心配していたじゃない。
まあ、凪は、頭も良いから
勉強の心配はしてなかったけど
人付き合いがね。」
と、笑いながら言うと
デコピンをされて
「いった~い」
「ばぁ~か。」
と、二人で言い合っていると

「それだよ、それ。
あんたらは、何時も楽しそうだった。
兄さんも、良く笑っていたし。
俺は、両親と一緒に行きたくなかった
なぜか、兄さんに冷たい両親に
何度も言った。
兄さんも一緒に
そうじゃなければ、日本に残ると
だけど、紬は、遥と違うって
アメリカで学んで
より上を目指すのって
兄さんは、優秀な人だ。
俺よりも·····って
だけど·····だけど。···」
と、涙をポタポタ落としながら
話す、青山君。

「そっか、そうだったの。
遥は、一人じゃなかったんだね。
ありがとう。
本当に、ありがとう。」
と、彩葉の言葉に
涙を流す····紬·····に
凪が、紬の頭をポンポンと
優しく叩いていた。
「お前が、一緒にいたら
また、違った面白さもあったな。」
と、言うと
紬は、はっと顔を上げて
凪と彩葉を見る
二人は、優しく笑いながら頷いた。

青山君は、
嫌な思いをさせてしまった事を
沢山謝ってくれた。

はっと、彩葉は、
天音を探すが
天音は、いなくなっていた。

天音は、彩葉が
彩葉と薫の式に招待をした。
と、言うより
ピアノを弾いて欲しいとお願いをした。
それに、天音は答えてくれたのだ。

「凪、帰る。」
「おう!薫に謝れよ。」
「うん。沢山、たくさん、謝ってくる。」
「そうしろ。それでも、駄目なら
今度は、お前が追え。」
と、言われて
何度も、頷いた。

会ってくれるか、わからないが
着替えて、薫のマンションへ向かう。
< 73 / 85 >

この作品をシェア

pagetop