君に捧げる一途な愛
不安な心と涙
今日はいつもの仕事プラス、倉庫の手伝いをしていたのでヘトヘトだ。
定時になると、寄り道せずに帰宅した。
でも、私には疲れを感じている暇はない。
そんなに汚しているわけではないが、軽く部屋の掃除をして晩御飯の準備に取りかかった。

料理を始めて一時間が経った頃、インターホンが鳴った。
モニターを見ることもなく、玄関のドアを開けた。

「おかえりなさい」

目の前にはスーツの上にコートを着た政宗さんの姿。
仕事終わりに政宗さんが私の部屋にやってきた。
お互いに予定のない週末、一緒に晩御飯を食べて、まったり過ごすのが定番になっている。

「ただいま」

柔らかな笑みを浮かべる政宗さんと『おかえり、ただいま』なんて新婚みたいなやり取りをして、ドキドキするし照れくさい。

最初は『いらっしゃい』と言っていたけど、あまりしっくりこなかった。
政宗さんを出迎えるときに言う言葉を迷った結果、自然に口から出たのが『おかえりなさい』だった。

「寒かった」

政宗さんがコートを脱ぎながら言う。
私はそれを受け取ってハンガーにかけた。

「急に寒くなってきましたもんね。ということで、今日はキムチ鍋にしました」

「ありがとう。楽しみだな」

「手洗いうがししてきてくださいね」

「ああ」

政宗さんは青いスリッパを履き、その足で洗面所に向かった。
あのスリッパは政宗さん用に買ったものだ。
ちなみに、私が履いているのは色違いのピンクだ。

キッチンに行き、鍋を温めなおしていたら肩に重みがかかった。
政宗さんは背後から私のお腹に手を回して、顎を肩にのせてきた。
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