祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
 エディアは立ち上がった。
「連れ戻しに来たわけではないので、安心してくれ。ただ、今回の件で礼を……いや、一度おまえに謝りたかった」
 テーブルを回って、エディアはシルフィスの前に立つ。
 エディアの目が自分を見上げることに、シルフィスは軽く驚く。記憶の中のエディアの目線は、自分と同じくらいの高さだったのに。
「これで帰る。マスターによろしく伝えてくれ」
 少しあわてた。
「城まで送らなくて……」
「大丈夫だ。裏に護衛を待たせている」
 エディアはフードを上げながらシルフィスの横を通り過ぎる。
 それを目で送りかけて、シルフィスはハッとドアの存在に気づく。急いで体をひねって、エディアのためにドアを開けようと、ドアノブに手を伸ばした。
 と、不意にエディアは立ち止まった。
 何だろう────と、エディアを見下ろしたシルフィスの目を、黒い瞳がひたと見つめた、次の瞬間。
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