猫かぶりなカップル
でも、あたしがそう言ったら、神城が急にあたしを壁に押しつけた。



いきなりなに!?



身長が低めのあたしに比べ、180cmはありそうな神城は、こうしてみるとより一層デカく感じる。



ちょっと怖いし…。



肩に触れる神城の手が痛い。



さっきよりもずっと近く、目の前に神城の顔がある。



なのに、こんな状況で、そんな神城の顔が綺麗だと思ってしまった…。



「お前今の立場分かってんの?」

「…」

「俺の言うこと聞く。それ以外に選択肢ないだろ」



そう言って、神城が身体を離した。



あたしに背を向けて、手をひらひらさせながら「決まったら早めに言えよー」と言う。



あたしはその場にへたり込んだ。



なに…あれ…。



神城の背中が遠くなっていく。



あれが神城の本性なの…?



もう…背に腹は代えられない…?



「待って!」



大きい声で神城を呼び止めた。



その場で振り向く神城。



あたしは勇気を出して大声を出す。



「分かった! あんたの言うこと、何でも聞く!」

「…」

「その代わり、少しでもバラしたらぶっ殺すから!」



あたしがそう言うと、神城は声を出して笑って、「はいよ」と言った。



嫌みもなく、心からの笑顔…。



こっちが、神城の素顔…?



その笑顔を見て、最悪だった気分がなんだかちょっと晴れたような気がした。



気分が最悪なのはあいつのせいだけどね!
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