猫かぶりなカップル
コイツも同類の人間だったんだ…。



の割に、あたしと違って今も全然仮面被ってる感じだけど…。



「それで本題だけど、杉谷さん、僕の言うことなんでも聞いてくれる犬になってくれない?」

「はい!?」



今、犬って単語が聞こえたけど!?



いぬ…?



聞き間違い?



「い、犬って可愛いよね~。あたしはポメラニアンが好き」

「そうそう。そのかわい~い犬に杉谷さんがなるの。飼い主は僕ね?」



ダメだ…。



聞き間違いじゃなかったみたい…。



犬ってなに!? 人間に「犬になれ」っておかしくない!?



「嫌なんですけど…」

「じゃ、杉谷さんがラブホで男といちゃついててしかも本当は性悪女ってことバラすからいいよ。この話は終わりね。バイバイ」



そう言って歩き出そうとする神城。



いやいやいや。



「待て待て待て!」



呼び止めて神城の制服の袖を強めに引っ張る。



神城が止まって振り返った。



「あ、あんたもバレたら困るんじゃないの?」

「僕は別にピュアキャラでやってないしどうとでも言えるよ。圧倒的に困るのはそっちでしょ」

「あたしだって、べ、別に普段の信用があるからあんたの言うことなんて誰も信じな…い…はず…」



あたしの声がだんだん小さくなってく。



自信がないのは事実だ…。



バラされたらどうなるか、怖いもん…。



神城は、あたしのその心も完全に見透かしたように、



「あっそう。じゃあいいけど」



と言った。



この悪魔め…。



黒い耳と尻尾が見えるよ…。



「とにかく、あんたの使いっ走りなんて死んでも嫌!」



そう言い切った。



このくるみ様がパシりとかあり得ない…。



昔からチヤホヤされ続けてきて、なんで今になってそんなことしなきゃいけないの…。
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