猫かぶりなカップル
昼休み。



もう大丈夫だと先生に言って保健室を出て、いつもの校舎裏へ。



奏が校舎に背中を預けて待っている。



あたしを待ってるその姿を見るだけで好きだと思ってしまうもん…。



手をぐっと握って、奏に近づいた。



「奏」

「ん、来たか。お前に話あるから」

「あたしもある」



あたしがそう言ったら、奏が怪訝な顔をした。



そんな顔しないで。



いつも奏本位で振り回されないから。



「…あたし達、別れよ」



固めた拳とは裏腹に、その言葉は案外口からするっと出てきた。



その代わり、涙も一緒に出てきそうになる。



ぐっと涙をこらえた。



泣きたくない…。



「は? なに言ってんの?」



あたしの言葉に、奏は顔をしかめた。



あたしは本心が見えないよう、少し強めに返事をする。



「だって元々好きで付き合ってるわけじゃないし。疲れた。あんたも別に他の女と切れてないしあたしいてもいなくても関係ないでしょ?」

「は? いや昨日のは…」



そのとき、「えっ、くるみちゃん!?」とデカい声が聞こえた。



バッと声の方を見ると篠塚くんが立ってる…。



奏が「誰だよ」という顔で篠塚くんを見ている。



「えっ、篠塚くん…どうしたの?」

「くるみちゃん心配で見に来たら、ちょうど保健室出るとこで、着いてきちゃった…」



今の、聞かれた…?



篠塚くんはびっくりした顔をしている。



「今の話…どういうこと?」



篠塚くんがあたしと奏の顔を交互に見て聞いた。



終わった…。



奏がニコッとした顔を作る。



「なんのことかな?」

「いや、だって、会話変だったし…。くるみちゃん、口調なんか違ったし…」



あー…。



なんかもう…面倒くさい。



もうなんでもいいや。
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