猫かぶりなカップル
ポカンとしているのは、あたしと篠塚くん。



「え? 神城もそんなキャラ?」

「うっせえな、どうでもいいだろ。お前ちょっと邪魔だから消えろよ。あと、くるみって呼び捨てにすんな」



イライラした声の奏。



あまりの凄味に、篠塚くんが「なんか…悪かった!」と、校舎裏から立ち去った。



残ったあたしと奏。



シンとするその場の空気。



耐えきれず、あたしが口を開いた。



「なに…本性ばらしてんの? ってか、『俺の』って何?」

「お前こそ何やってんだよ。あいつに全部バラされたらどうするつもりなわけ?」



さっきの衝撃に加え、その言葉で一気に我に返った。



「あいつに2人まとめて本性ばらされたらどうしよう…」



あたしの今まで積み重ねてきたものが頭の中を蘇る。



ああ、この感じ、奏とラブホで遭遇したときを思い出す…。



「奏といるとロクなことない…」



ついつぶやいた。



「それ本気で言ってる?」

「本気だよ…。あんたに脅されるまではずっと上手くやってたもん」

「バレたとしても俺がそばにいるけど?」



奏が言った。



校舎裏に冷たい風が吹く。



あたしの心臓が、ドクンと一つ跳ねた。



「…どういう意味?」



あたしの言葉に、奏はあたしの腕を少し強めに握る。



そのままぐっと一歩、あたしを校舎の壁際に追い詰めた。



壁が背中に当たる。



「嫌なら拒否れよ?」



少し余裕がなさそうに、少しだけ意地悪な顔で。



拒否なんて出来ないくらい近くの距離。



奏は、そう言って、あたしに…。



キスをした…。
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