猫かぶりなカップル
佐織さんが来るまでもう少し時間があるので、校舎内を散歩することにした。



屋上は、あたしと奏がお昼ご飯を食べた場所。



食堂は、奏が孤独感からあたしを救い出してくれた場所。



保健室に、廊下の隅、そして校舎裏。



あたし達の秘密を共有したところ。



高校生活は、あと一年。



もっともっと奏と思い出のある場所をつくっていきたいな。



「奏」

「ん?」

「大好きだよ」

「俺は愛してるけどな」



そんなことを言う奏に、胸の奥深くから喉元まで、ぐっと不思議な温かい気持ちがこみ上げる。



あたし達がはじまった校舎裏。



思わず奏のことを抱きしめた。



あたしに愛を与えてくれる奏。



そんな奏にあたしも絶えず愛を注ぎ続けたい。



だってあたしの胸からあふれかえった奏への愛は、そうでもしなきゃ洪水が起きちゃうよ。



こんなにあたしを愛してくれて、そして愛させてくれてありがとう。



これからあたし達、もっともっと幸せで手に負えなくなる。



あなたと一緒のそんな未来が、あたしは待ちきれない。


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