【完】孤独なメイドは執事を独り占めしたい
再び腰をおろして茶を飲み、心が落ち着いたところでライアンは二人に真実を語り始めた。



「実はな、母さん...アルマの母親のエレノアが亡くなる前にある約束をしたんだ」





それは、アルマが生まれてすぐの事。



エレノアは体調を崩して入院していた時、ライアンに一つの夢を託した。



「ねぇ。一つお願いしていいかしら?」



「なんだ?」



日に日に弱っていくエレノア。力を振り絞ってライアンに言った。



「あのね、わた...ボクの母様が生まれ育ったパーニスにあなたのお店を開きたいの。


この身体が良くなったらアルマとあなたと三人でパーニスに行って...パン屋さんを開いて...家族で......」



声が弱くなってきた。呼吸するのも辛い中、エレノアは最後までライアンの目を見て話続けた。



ライアンは時間を重ねる事に弱っていくエレノアをただ、じっと見て、手を握り、話を聞き続けた。



「あなたはパン職人の天才よ。ステラだけでパン屋をやるのは勿体ない。


もっと..はぁ....色んな人にあなたのパンを...はぁ...沢山の人に食べてもらいたい。


それはボクがこの世を去ってもよ。最後のお願い。ライアン....ボク達家族の夢を叶えて......」



エレノアは自分の夢をライアンに託し、そっと目を閉じた。



エレノアの閉じた瞳から一粒の涙が流れ落ちた。
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