食堂の白井さんとこじらせ御曹司
「それから、私、食堂の仕事があります。こちらに呼ばれるたびに、食堂のほかのスタッフが私の穴埋めをしてくださって大変な思いをしているのです」
「あ、すまない……。そうだった……。そうか、食堂のスタッフ……」
 そうだった?忘れているのでしょうか?
「明日と明後日は、食堂のスタッフが一人休みますので、余裕はありません。呼ばれても困りますので」
 よし。伝えました。できればずっと呼ばないでほしいですけれど。
「食堂のスタッフが足りないのか?」
「足りない?のではなく、ギリギリです。別のことに時間を割く余裕はありません」
「もう少しスタッフを増やしたほうがいいということか?」
 何を言っているのでしょう。
「いいえ、大丈夫ですよ?今までも大丈夫でしたので。こうして学生相談室に来ることがなければ」
 黒崎さんがうーんとうなり声を上げました。
「スタッフの数か……」
 やめてください。
 スタッフを増やせば、私を何度も呼べるとか考えているのなら、やめてください……。
「あの、もう用が済んだのでしたら、失礼いたします」
 早く立ち去りましょう。
「あ、待って」
 黒崎さんに手をつかまれました。
「付き合いたいと、思っているんだ……その、どう思うだろうか?」
 え?
「つ、付き合う……って……」
 恥ずかしそうに目を少しだけ伏せた顔。
 イケメンが、自信なさげにうつむいている顔が……。
 匂い立つ色気。
 ごくりと唾を飲み込みます。
 急に、そんなことを……言われても……。
「やはり、学生と大学職員では……まずいだろうか」
「は?」
 ちょっと待ってください、どういうことなのでしょう?
「学生と付き合う?」
 黒崎さんがはっとして、つかんだ手を離しました。
「い、いや、あ、まだその、付き合えるかどうかは分からないんだけど、付き合いたいと思っている人が」
 ああ、私ではないのですね。
 一瞬、勘違いしてしまいました。
 う、恥ずかしいです。
 相談事として、話しているのですね……。
「学生って、うちのですか?」
「あ、いや。学生名簿には載っていなかったから、別の大学で……」
「じゃぁ、いいんじゃないですか?成人してれば。教え子に手を出すとか、付き合っていることで成績だとかそのほかのことを優遇するとか……別の大学の学生であれば問題ないと思います」
 黒崎さんが顔を上げた。

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