食堂の白井さんとこじらせ御曹司
「男の人って、女であればだれでも当たり前に化粧すると思っている節がありますよね?化粧なんて髭をそるのと同じ程度のことだと思っていません?だから、就職活動するのにも、化粧は当たり前にしていないといけないみたいな……」
 ちょっと愚痴めいたものが口から出ます。
「値段の問題ばかりではありません。化粧初心者にとって、百貨店の化粧品売り場は敷居が高いところなんです。場違いな人間が来たと思われないか、見下されているんじゃないかと不安がいっぱいで。高校を卒業したあとに、母親と一緒に足を運んで化粧デビューする子もいるくらいです。不安のある人間が気軽に行ける場所ではありません」
 黒崎さんがうなだれました。
「そうか……確かに、スーツを着慣れていない人間が、いきなりオーダースーツを一人で作りに行けと言われたら戸惑うのと同じかもしれない……」
 さすが、黒崎さん。例えがセレブです。ですが、まぁ、いい例えです。たぶん言いたいことは理解してもらえたと思います。
「だったら、まずは勉強か。ネットでスーツのことを調べる。オーダーでない店にスーツを見に行ってみる……。メイクも……。そうか、白井さん、分かったよ。ネットでメイクの仕方動画を見て勉強したらどうかとアドバイスをしたらいいんだね?」
 仕方ないですね。
 黒崎さんは、メイク動画なんて見たことないでしょうから……。
「はー……。黒崎さん、メイクってどういうものか知っています?」
「ファンデーションを塗って、口紅つけて、ああ、目だ、アイライン、どれから眉毛。えーっと」
 ですよね。
 男性の化粧に対する知識なんてその程度のものですよね。
 ソファから立ち上がる。
「白井さん?」
「百均行きましょうか」
「え?なぜ、また百均に?」
 戸惑いながらも、黒崎さんは素直についてきました。
 前も行ったことのある、スーパーの中にある百均に到着です。
「さぁ、じゃあ、黒崎さん、黒崎さんの言っていたメイクに必要なものを教えてください」
「うわー、まさか、化粧品まで100円なのか?すごい!でも、これなら金銭が問題で化粧ができないということはまずないな」
 黒崎さんがちょっとほっとした顔で化粧品コーナーを見ています。
 高身長のイケメンが、背を丸めて化粧品をじーっと見ている姿に、買い物客がちらちらと見ています。
< 118 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop