食堂の白井さんとこじらせ御曹司
「必要ないと思うから忘れてもいいけれど、もし友達で悩んでいる人がいたら教えてあげて。コンシーラー。これはシミやそばかす、目の下のクマの上にちょんちょんとつけて隠すときに使うの。それから、シャドーファンデ。小顔に見せたいときや、顔の凹凸を強調したいときに陰影をつけるもの」
「あ、イラスト描くと思えばいいんだ!」
「そうか。自分の顔で絵を描くって考えれば、確かに化粧もできそうな気がしてきた!」
 二人が盛り上がっています。
「絵を描くの?」
 学生さんには絵をかくことが趣味の子たちも多いです。
「はい。白井さんも絵をかきますよね!掲示板の返信に書いてあった犬、かわいかったです!」
 え?犬?
「犬は、描いてませんよ?」
「やだ、白井さん、描いてたじゃないですか!」
 ……。
「もしかして、猫の絵のこと?」
 横山さんと村上さんが固まりました。
「猫だったんですかぁ?」
「猫に見えませんでしたか?」
 ぷーっと、3人で思わず笑いました。
「楽しそうだね」
「楽しそうだね」
 黒崎さんが背中から鏡を差し出してくれました。
「あっ」
 小さく声を上げて、二人が黒崎さんの顔を見ています。
 ちょっと腰が引けている気がします。
「鏡、ありがとうございます。えっと、黒崎さんはあちらで待っていてくれますか?話は聞いててもかまいませんが、化粧する姿を凝視されると困りますから……」
 男性に化粧してる姿見られるのって、平気な人もいるけれど大多数は見られたくないです。
 しかも、興味深々にイケメンにじーっと見られていては、落ち着いて化粧なんてできません。間違いありません。
 今はすごく中途半端な状態なので、顔を黒崎さんの方に向けるのはやめておきます。背中を向けたままで失礼なのは許してほしいです。
「あー、分かった。えっと、また何か必要なものがあれば言ってくれ、すぐそこにいるから」
 黒崎さんはパーテンションの向こうに行ってくれました。声の届く距離に椅子を寄せて座ったようです。
 うーん、これはしっかり説明を聞くつもりでしょうか。
 気にしては負けです。

「じゃぁ、続きね。まずは必要なものをそろえていきます」
 そして、最終的に、必要最小限の化粧品を各自の目の前に並べました。
「あの、写真撮っていいですか?」
 スマホを抱えて、二人とも並べた化粧品を写真に撮っています。
< 131 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop